みなさんは「台湾華語」という言語を知っていますか?
台湾に興味がある方は知ってるかもしれません。
この記事では、台湾華語について中国語との違いにも触れながらまとめました。
台湾華語とは
台湾華語とは、台湾で話されている中国語のことです。
台湾では中国大陸の中国語と同じような中国語が使用されています。
しかし、大陸の中国語と区別するために日本では台湾の中国語のことを「台湾華語」と表記することがあります。
たまに、香港やマカオのように台湾でも広東語が使われていると誤解される方もいますが、台湾では広東語は使用されていません。
台湾人と中国人は、お互いに自国で話している中国語を使っても問題なく意思疎通することができます。
では、なぜ台湾人は中国語を話すのでしょうか。
それは、歴史的な理由があります。
もともと南京に政府を置いていた中華民国政府は、標準語政策を取っていました。
この標準語は、現在一般的に知られている中国語で中国では「普通话」と呼ばれています。
1945年に日本が台湾の統治権を手放したあと、台湾は中華民国政府に統治されることになりました。
このときに台湾人に対する中国語教育が始まります。
以降、一貫して中華民国政府は中国語教育を続け、今も台湾の標準語は中国語なのです。
中国の中国語との違い
台湾華語と中国の中国語とは語彙や発音、文法などの面で少し違いがあります。
①漢字の違い
台湾で使用している漢字は「繁体字」と呼ばれ、簡略化されていない字体で、日本の旧字体とほぼ同じ漢字です。
中国で使用してる漢字は「簡体字」と呼ばれ、従来の漢字を簡略化した字体です。
ちなみに、今の日本の漢字は「簡体字」とは違う簡略方法をとっているので、少し形が違う漢字が多いです。
繁体字と簡体字の例をいくつか表にまとめました。
繫體字 | 簡体字 | 意味 |
為什麼 | 为什么 | なぜ |
買賣 | 买卖 | 売買 |
觀光 | 观光 | 観光 |
繁体字だと日本語と同じ漢字や形が似てる漢字が多いので、日本人にとっては比較的読みやすいです。
また、香港やマカオでも繁体字が使われています。
ただし、香港やマカオは広東語なので、発音が全く異なります。
簡体字は中国のほか、シンガポールでも使用されています。
②語彙の違い
台湾と中国では使用している語彙に違いがあります。
中国の中でも方言によって違いがあり、一概に中国ではこの単語だと言い切れないのですが、やはり台湾では独特の表現がありいくつかの単語に違いが見られます。
以下、いくつか例を挙げます。
台湾 | 中国 | 意味 |
鳳梨 | 菠萝 | パイナップル |
腳踏車 | 自行车 | 自転車 |
馬鈴薯 | 土豆 | じゃがいも |
また、台湾では「土豆」は「ピーナッツ」を意味するためややこしいです。
たまに通じないことがあるので、違う単語を見つけるたびに覚えていきましょう。
③発音の違い
台湾でも中国でも基本的な発音は同じなのですが、台湾人の中国語のほうが全体的に柔らかく、やさしく感じられます。
中国語の発音には、中国語特有の舌を巻いて発音する「zh, ch, sh, r」といったそり舌音があります。
しかし、台湾人の場合、あまり舌を巻かない人が多いです。
あまり舌を巻かなくていいので、日本人としては台湾の発音のほうが楽です。
台湾華語 | 普通话 | 意味 |
哪里 | 哪儿 | どこ |
一點點 | 一点儿 | 少し |
中国の中国語でよく使われる「儿er」の発音も台湾ではあまり使いません。
また、中国語には「声調」というものがあり、この声調という声の抑揚によって意味が変わります。
声調には「一声・二声・三声・四声・軽声」と5種類あります。
ちなみに、今ではわかりづらくなりましたが、日本語も中国語と同じ声調言語です。
中国(特に東北部)では、この声調ははっきりと抑揚をつけて発音されます。
一方、台湾華語ではあまり抑揚はつけない平坦な発音が特徴です。
軽声の発音は少なく、中国で軽声で発音される漢字の発音が、のびるように一声になることもしばしばあります。
中国で一声で発音される漢字が二声に変化することなどもあり、細かい発音の違いは結構あります。
④発音記号の違い
漢字の発音を表記する発音記号は、台湾では「注音符號(ボポモフォ)」、中国では「拼音(ピンイン)」を使用します。
注音符號 | 拼音 |
你好 (ㄋㄧˇ ㄏㄠˇ) | 你好 (Nǐ hǎo) |
ただし、台湾で語学留学しても基本的に授業は拼音を使用しています。
中国語を勉強する外国人にとっては、アルファベット表記の拼音のほうがわかりやすいからです。
しかし、ボポモフォのほうが中国語の発音表記に特化しているため、発音がわかりやすいと感じる中国語学習者も少なからずいます。
また、台湾人にとってボポモフォは日本人の仮名文字のような存在で、ピンインは習ったことがないためわからない人が多いです。
台湾人と仲良くなり、発音を教えてもらうには覚えておいたほうがいいですよ。
⑤文法の違い
台湾華語には中国の中国語と少し違う文法もあります。
例えば、「私はあなたに電話を掛けます」という文章で比べてみましょう。
- 中国:我给你打电话。
- 台湾:我打電話給你。
上記の文はどちらも同じ意味なのですが、少し語順が違います。
「あなたに」を意味する「給你」が中国の中国語では主語の次に、台湾華語では電話の後に置きます。
台湾人に中国の表現でで話しても通じるので問題はありませんが、文法の指摘をされるかもしれませんね。
台湾人は「中国語」と言うの?
台湾人は自分たちが話す言語を単に「國語」と言い、「國語」または「中文」が中国語を指す言葉です。
「國語」は、自分たちの国の言葉という意味で、日本の学校授業で「日本語」と言わず、「国語」と言っているのと同じような感じです。
中国人は、中国語の標準語のことを「普通话」と言いますが、台湾人でを中国語そのように言う人はいません。
また、中国人は中国語のことをよく「汉语」とも言いますが、台湾人にとっては「漢語」は「漢民族」が話す言葉という意味で、中国語の一種です。
中国は漢民族が9割を超えますが、台湾は原住民や閩南人、客家、など多種多様な民族が存在する多民族国家で、純粋な漢民族はさほど多くありません。
実際に統計では、台湾でも漢民族が人口の大半を占めていますが、数世紀にわたる通婚により多くの台湾人が原住民の血を引いています。
ある1つのDNA調査によると、台湾の人口の88%が原住民の祖先を持つと言われています。
そのため、台湾人にとって「漢語」は使用頻度が低い単語と言えます。
ほかにも「華語」や「華文」という言い方もありますが、これは「華人(中華系の人)が話す言葉」という意味があり、これもまた中国語の一種です。
そして、「中文」というのが大きくまとめて「中国語」という意味で、外国人や華人以外が話す中国語という意味も含みます。
ですので、私たち日本人が話す中国語も「中文」です。
中国語 | 意味 |
中文 | 広義の中国語 |
國語 | 自分たちの国の言葉 |
華語or華文 | 華人の言葉 |
漢語 | 漢民族の言葉 |
普通語 | 中国の中国語の標準語 |
「台湾語」ってある?
中国語とは別に「台湾語」という言語もあります。
台湾語は、中国福建省の南部で話されている閩南語をルーツに持つ台湾独自の言語です。
今では主に年配の方が話すことが多いですが、家族同士の会話や買い物での店員さんとのやり取りなど日常的に耳にします。
特に田舎のほうに行くと普通に台湾語で話しかけられることもあります。
ただし、現在、台湾語を日常的に話す若者は減少傾向にあり、あまり台湾語を話せない若者が都心を中心に増加しています。
また、原住民が話す「台湾諸語」もあります。
台湾諸語はオーストロネシア語族に属する言語で、ナウル語やハワイ語、ニュージーランドの原住民マオリ族の言葉などが親戚言語にあたります。
台湾語と台湾華語について詳しくは「台湾語とは|中国語との違いと使えるフレーズの紹介」を参照してください。
まとめ
以上、台湾華語について中国の中国語との違いに触れながら紹介しました。
台湾の中国語についての理解を深めていただけましたでしょうか。
中国の中国語とは様々な違いがあるものの、意思疎通には大きな問題はありません。
台湾に興味がある方や中国語を勉強している方は、ぜひ台湾に行って現地の中国語を聞いてみましょう。
新たな発見があるかもしれませんよ。
大学卒業後、台湾の台中で1年間のワーホリを経験。
語学を勉強するのが好きで、大学時代に中国語を副専攻で勉強しながら、ラテン語の授業を受けたり、韓国語を独学したりした。
また、イタリア語をオンラインで学習中。
語学学習の楽しさやさまざまな国の文化を発信。
コメント